絶対尺度を握られているということ


朝日新聞によるとカーナビなどの位置情報を提供する(と書くと正確ではないのですが・・・)人工衛星GPSの測位制度が来年以降低下することが懸念されているようです。
GPSとはGlobal Positioning Systemのことで、米軍が軍事目的に打ち上げた30の人工衛星によって地球上のどこにいても位置情報を割り出すことができるシステムのことです。カーナビや航空機、船舶などの民間用途にも幅広く利用されています。
精度低下の理由は、既存衛星の寿命による機能停止の一方で新規衛星の打ち上げが延期されることによるものだそうです。
GPSは位置情報だけではなく、衛星が原子時計を搭載していることによって正確な時刻を知る用途にも幅広く利用されています。GPSはいわば、位置と時刻という絶対情報を世界に提供している訳です。世界がグローバル化し、リアルタイムにシンクロすればするほどこの絶対情報の重要性は増しています。時間と空間の絶対尺度が存在することで、時空にまたがる安定した情報のハンドリングが可能になっているのです。
デジカメで撮影する写真をとってみても、最近では、撮影時刻の他、位置情報を付加するものが出てきています。iPhoneにもGPS機能があり、写真を初めとした様々なアプリケーションで位置情報が活用されています。最近では、twitterのつぶやきに位置情報をつけるという動きもあるようです。
米軍およびアメリカ政府は世界がより便利になるようにという善意からか、こうしたGPSの情報をオープンにしています。我々はこの善意(?)にフリーライドしている訳です。しかし、こうした絶対情報への依存度が高まれば高まるほど、いざその使い勝手が悪くなったときのインパクトは大きいのではないかと思います。ヨーロッパ諸国はこの懸念もあり独自の衛星を打ち上げる計画を持っていますが、まだ実現には至っていません。
グローバル化する世界の中で、正確な時刻や正確な位置などの絶対情報の重要度は増しています。絶対情報のインフラを特定の国家が専有している状態は見えない覇権につながっているのではないかとすら感じられます。