トヨタが先導する日本企業の顧客指向


トヨタ自動車が顧客志向を実現するためのマーケティングの別会社を設立すると発表しました
ちょっとややこしいですが、設立される会社は二つ。一つはグローバルにマーケティングを統括する会社。もう一つはその会社の下部組織として日本市場のマーケティングを行なう会社です。グローバル統括会社の下には、日本市場のためのマーケティング新会社の他、広告会社のデルフィスやアムラックスといったショールームも束ねられるかたちになります。

 2つの新会社は、トヨタから別会社化することで、業務の専門性と機動性を高め、「お客様を向いた活動」に重点をおいた、現地現物のマーケティング活動を進めていく。更に、「お客様」のニーズを迅速かつ的確に把握し、タイムリーにトヨタへフィードバックすることにより、トヨタの商品開発や販売の改革にも繋げていくことも視野に入れた活動を行っていく。

二つの会社は、トヨタにおける顧客情報収集拠点となるようです。これは6月末の株主総会で新社長となった豊田章男氏の記者会見における、顧客視点に立った経営という内容とも一致するもので、新会社の動きは新社長の意向を汲んだものであることが想像されます。
日本の企業はこれまで高い技術力を起点に顧客をリードするというやり方で成功してきました。そのため、顧客視点に立つことが必ずしも得意ではありません。一方海外の企業に目を向けると、以前ここで紹介したP&GのA.G.ラフリーを始め、顧客志向こそが経営のエンジンと断言する経営者が少なくありません。こうした企業は顧客理解の方法にも当然ながら長けています。
技術などのシーズ先行型経営から、新の顧客ニーズ先行型に変革することは日本企業がグローバルな競争環境化で生き残るために必要不可欠な要素の一つです。日本の企業はよくも悪くも横並び傾向があります。今回のトヨタが顧客指向に大きく舵を切ろうとしていることは、他の日本の企業にとって大きな影響力を持つのではないでしょうか。1997年に「トヨタ エコプロジェクト」とプリウスの発売によって、企業、特に自動車会社の環境への取組みを大きく先導したトヨタが、また新しい先導者の役割を担おうとしています。