脱既存フレーム型商品を生み出した二つのポイント


またまた昨日の続きです。
どうしたらParty-shotのような製品を生み出すに至ったか、日中ぼんやり考えていました。
これは想像に過ぎませんが、二つの大きなステッップがあったのではないかと考えています。
一つ目は、写真撮影において、写真に関心とモチベーションを持つ撮影者は撮影対象になる機会は少ないというまったくもって当たり前な事実と今一度真剣に対峙したということです。特にパーティなどの用途において、真面目な撮影者であればあるほど実は寂しい思いをしている、というユーザーインサイトへの気づきが重要だったのではないかと思います。この寂しさを解消するにはどうしたらいいんだろうか、という問いが立てられるかどうかが、このような脱既存フレーム型の製品に到達する最初の一歩だったのではないでしょうか。
それでは、どうすればそのような気付きを得ることができるでしょうか。いろんな方法論があるかと思いますが、エスノグラフィ手法のようなユーザーの利用文脈の観察は一つの有効な手段なのではないかと思います。しかも、カメラのスペックを追いかけるようなタイプの観察ではなく、あくまで幅広い利用オケージョンにおける、ユーザー視点に立った、体験起点の観察調査が必要です。
今回のケースでエスノグラフィが採用されたかどうかは不明ですが、エスノグラフィによって様々なユーザー文脈を観察することで、このようなインサイトに到達できることは想像がつきます。
二つ目は、上記のユーザーインサイトと技術をうまく掛け合わせたという点です。しかも、以前ここでも書いたハード志向・最先端技術志向から脱却した形でこの掛け合わせを行っていることがポイントなのではないかと考えています。
このParty-shotのケースでは、さすがに枯れたとまでは言いませんが、そこそここなれた技術である顔認識技術が使われています。撮影対象者の笑顔を感知してシャッターを切るという機能がありますが、これも既存技術の範疇です。例えば、撮影対象となる人の写真をあらかじめ登録し、その人をメインに撮影するようにするといった、使い勝手よりも技術的なチャレンジを優先したような機能は採用されていません。あくまで既存技術でできる範囲に留めているのです。
多くのメーカーはユーザー視点よりも、最先端の技術を使わなければ評価されないという脅迫観念(Obsession)を持っているのではないでしょうか。技術志向のObsessionは時としてユーザーの体験を無視したものになりがちです。「こなれ」が足りない先端技術は時としてユーザーに負担を強いることもあるでしょう。ユーザーの負担も少なく、メーカーとしてもハンドリングしやすい技術の組み合わせを前提とすることが、よりユーザー視点に立った技術の掛け合わせを成功させているのではないかという気がするのです。